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楽・粋・癒 テニスウェア、アンダーウェア、ラケット試打、ストリング(ガット)のインプレ、感想など、ご参考になれば嬉しいです。そして、デビューアルバムを聴いて以来の元気と癒しの源、少女時代の魅力や情報もお届けします。

楽・粋・癒

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きまぐれテニス小説 『30-40』 ②

きまぐれ テニス小説 『30-40』


                    第 2 話  2010 世界バレー


カランコロン♪
ストリングショップ と カフェ が 一つになったテニスカフェ“ ふらりんこ ” の扉を開けると
いつもの鐘の音色が迎えてくれた。
古くは3階建てだったスーパーを全面改装して今風な外観に整備された1階が“ ふらりんこ ”。
2階と3階は、アパレルの事務所が入ってる。
なかなかに広いフロアは、4つのスペースに分かれていて、手前右側が カフェスペース。
ここには、55型の液晶テレビも設置してある。
大抵は、プロテニスの試合が流れていて、たまに違うスポーツも流れるけれど、その時は、
陸上くらいかな。
オーナーの考えで、野球 ・ サッカー ・ ゴルフは流さないんだって。この3つのスポーツは、毎日
のニュースの中でも見れるだろ、って。
全く同感。

大型テレビの後方、ベンジャミンで垣根を作ったその奥が、ストリングの張替えを行うスペース。
4台のマシーンがセットしてあって、常時、何台かは稼動している。

ストリンキングスペースの左側は、ストリングの販売カウンター。ここには、取り扱っているストリ
ングのファイルが用意してあって、カフェに持ち込んでゆっくり選ぶことができる。
実はこのファイル、ストリンガーさんが張る工程で気付いたことやアドバイスが載っていたり、
実際に張って使用してみたお客さんのコメント、いわゆる インプレ と呼ばれる感想や評価も合わ
せて読めるようになっていて、ひそかに人気があるファイルだ。

ストリングの販売カウンターの手前、つまりお店に入ってすぐ左側は、サイフォンが並ぶ、珈琲の
販売カウンター。
ポコポコという、サイフォンの音と、珈琲の香りがなんともリラックスのひとときを演出してくれて、
この雰囲気が気に入って、あしげく通う常連さんも多いらしい。

「 あ、いらっしゃいませ 」

入り口で、フロア内にひと回り目線を送っていると、学生アルバイトの奈保ちゃんが、珈琲カウン
ターから顔をのぞかせた。
黒髪のショートカットが似合う、よく気のきく明るい女の子だ。

「 あ、こんばんはー。奈保ちゃん、いたんだ 」

挨拶を返すと、彼女は、焙煎スイッチを押そうとする手を一旦止めて答えた。

「 はい、一週間で唯一、部活が休みの日ですから 」

「 そっかぁ、偉いなー。奈保ちゃん所のテニス部、練習厳しいのに。身体休めなくて大丈夫? 」

「 全然大丈夫です。ここに来てると楽しいですし、珈琲の香りで癒されますから 」

「 そう、それは良かった。あ、本日の珈琲を一つお願い。奥で張替え頼んで戻って来るから 」

「 かしこまりましたー 」

奈保ちゃんの笑顔に送られ、ストリングの販売カウンターに進むと、カウンター内には人の姿が
なく、ストリンキングスペースから声をかけられた。

「 おーい、こっちだよー 」

「 ああ、夕美絵さんこんばんは。作業中だったんですね 」

「 そうよー。今日はもう朝から私だけで7本目。この時期は、あちこちで大会も多いでしょう。その
 せいじゃないかなー、大忙しよ 」

「 そんな状況なのに、エッグパワー入荷のご連絡をいただき、ありがとうございます 」

「 ほんとよねー。よし、7本目出来た、と。 はい、ラケット出して 」

夕美絵さんは、正式なストリンガーの有資格者で、プロの大会でもストリンキングを務めている
ほどの腕前。
そんな人に、テニスの一愛好家に過ぎない自分が張ってもらえるなんて、ありがたい。

「 あ、はい、お願いします 」

いつものことながら、ちょっと緊張しつつ、会社のロッカーから持ち帰ってきたラケットをソフト
バッグから取り出し、手渡した。

「 どうする? 1 時間くらいだけど、待ってる? それとも明日以降、取りに来る?」

「 待ってます。今、奈保ちゃんにコーヒーも頼んだし 」

「 オッケー。じゃ、カフェで世界バレーでも見てて。もう始まる頃だし。張り終わったら声かける
 から 」

「 あ、今日は、バレーボール中継なんですか 」

めずらしいなと思って聞いてみると、

「 そう。私の趣味でね 『 2010 世界バレー 』。ムフ。ご覧の通り、見れないんだけど 」

手際良くストリングマシンにラケットをセットしながら、夕美絵さんは笑顔で答えた。

「 ああっ、なんか申し訳ないです。じゃ、代わりに見ときます、ははは 」

「 木村さおりん もイイんだけど、江畑って子のバックアタックいいから、あと佐野ちゃんのレシー
 ブも、地味な様でファインプレーだから。注目して 」

「 はい、わかりましたー 」

木村に、江畑に、佐野? 選手の名前をポンポン出されて慌てたけど、何とか記憶し、
『 2010 世界バレー 』 が始まるという大型テレビのあるカフェスペースへ急いだ。


                                             ( きまぐれで ) つづく


      ● 「 第1話 会社帰りに寄ります 」 は、こちらからお読みいただけます。

      ● 「 第3話 栗原恵と膝サポーター 」 は、こちらからお読みいただけます。 


テニス小説 | 投稿者 そうだ全仏行こう 17:42 | コメント(0)| トラックバック(0)
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